ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
そんなこんなで、僕が周りの状況を確認すると、亮平もそれにつられる。
「よくもまぁ、SNSだけでこんなに集まったもんだ!」
「あぁ、そうだな」
確かめていたのは盛況ぶりじゃない。僕には再会したい人がいるんだ。
「お待たせしましたー」
店員が次々に飲み物を運び、今にも乾杯の音頭になろうかという、まさにその時だった。
「ごめんごめーん! ちょっと迷っちゃって」
「ぁ……」
現れた。
――……。
彼女の登場に、場の空気が静まり返る。
「ヤダ。ここ、靴脱ぐの?」
ヒールの高いブーツを履き、170cmを越える高長身。
向日葵のように可憐に咲いたつけまつげが、吸い込まれそうな瞳を演出。
ダークブラウンの長い髪を耳にかけながら前のめりになると、大きく開いた胸元には、視線の進入禁止を警告するきらびやかな十字架のネックレス。
スリットから見えた艶めかしい美脚に、店員も仕事を忘れて目が止まる。
絶世の美しさを見せつける彼女の名は、宝泉彩矢香。
ついこの間までアメリカに留学していた帰国子女。
――……。
「えっ⁉ 何、この感じ」
皆が言葉を失っていると、笑いを欲しがる男がここぞとばかりにジョークを飛ばす。
「あの~、パリコレからのお帰りでしたっけ?」
「「ハハハッ――」」
これには、当時の教室さながらにドッと沸く。
「クスッ―― ナオヤ、全然変わってないね!」
彼女がどこに座ろうかと視線を配らせていると、僕の横にいた美佐子が即座に空気を読んだ。
「サヤ! ここ、いいよ」
それでやっと、中学時代の恋人と目が合う。
「たっちゃん……」
「彩矢香、ひさしぶり!」
7年だ。
やはり、同窓会を企画した甲斐があった。
今でも好きだと、この高鳴る鼓動が言うのだから。