ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
「ッ゛……」
俺は殴ってやりたい気持ちが瞬時に湧いたが、叶えたところでふたりが戻ってくるわけではない。
グッと握りしめた拳を後ろ手に組んだ。
彼女は俺の顔を見るなり頬を緩ませたが、テーブルの上に置いたきらびやかな骨覆に絶句する。
急な減速をした歩を進めながら、
「磨理子……」
と、娘の名前を呼んだ。
「え⁉」
今度は俺が絶句する。どうやら、車の中で感じた悪寒は的外れだったらしい。
「違いますよ。これは新八さんの遺骨です。さっき、火葬してきました」
「ぇ⁉ あ、あの人、生きてたの⁈」
「……はい」
君江はすぐさまカバーを剥いで骨壺を取り出す。
「信じてた。あの人が自殺なんかするわけないもの……やっぱり生きてたのね」
そう言って、涙を拭くことも忘れ丁重に蓋を持ち上げる。
「…………」
中から真っ白な煙が噴きだしたわけでもないのに、彼女の表情は一気に老けこんだ。
「あなた……」
惜しみなく大粒の涙を流し、愛おしそうに頭がい骨を撫でる。
その場にいた誰もが、あまりの哀愁に直視できなかった。
が、これまでひた隠しにしてきた異常性をまざまざと俺たちに見せつける。