ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



いよいよ、重大な決断をする時がやって来た。

高校への進学は人生を大きく左右する。

私は開桜の中でも成績上位が集まる3年1組への進級が決まっていた。

しっかりと準備を整えるため、志望校は2年の終業間際に示すのが慣例らしい。

私は先を見過ぎていたから、高校や大学のことには無頓着。

だから父の望む学校に進もうと思い、相談した。

が、

『どこでもいいさ。お前の人生なんだから。大事なのは高校や大学よりも、早く結婚して家庭を持つことだ』

なんて、またも不必要論を押しつける。

それは友達もよく言っていることだった。

『働きたくないし、早くイケメンの金持ち見つけて結婚したーい!』

『わかるー! でもさ、あたしお見合いなんだよねー絶対。イイトコのお坊ちゃんと。金持ちの家に女で生まれたら、親のために結婚する道具でしかないんだよね』

『そうそう。勉強する意味なくなーい?』

『『ないない!』』

『だ・か・ら?』

『しないしなーい!』

『『ハハハハハハッ——』』

私は、愛想笑いしながらそれを聞いていた。夢も目標もないなんて哀れだな、と。

でも、それが宿命なんだと父の言葉で思い知らされた。

いくら努力したところで、女であることが邪魔をする。

変えられないモノ、超えられない壁、得られない未来。

絶望した。

『ねねちゃん。ボーのなまえはセーヤなの? ヨツュギなの?』

言葉を話すようになった弟は、そんなことを私に訊いてきた。

この苦しみなんか知る由もなく、純粋無垢な瞳で。

『セイヤだよ。お名前言ってごらん』

この子は恨まない。

『ほ、ほーせんせいやでしゅ!』

この家に生まれてきたことを恨む。

『いくつ?』

私の中で、忍耐が崩れた。

『2さい!』

褒められたいという思いも消えた。

『よくできましたー! ヨシヨシッ』

生きる意味すら。



 
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