ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
肩の荷が下りた私は、私じゃなくなった。
いやむしろ、本当の姿なのかもしれない。
(友達)が利用するなら、こっちも思う存分操ってやる。
お金と時間を散財して、遊ぶことに費やした。
だけど、暇でヒマでしょうがない。
心にぽっかりと開いた穴を埋めるモノは何一つなかった。
“あれ”も、その一環。
『サヤ! すげーこと知ったよ、オ・レ!』
中2の頃からしつこくアプローチしてくる玄がある日、私だけに秘密を教えてくれた。
『ハタセンから聞いたんだけど、ヤスと大貫って同じ小学校の出身らしいよ』
『え⁉ ヤスって千葉じゃなかった?』
『そうそう! 奇跡じゃね? しかも、あんなのとさ』
『フフッ……だね!』
あんなの。
大貫幸恵は開桜で浮きに浮いていた。
背は小さくて太っていて、目が大きくて、冬には頬が真っ赤になる。見た目はまるでダルマ。
そして何より、偏差値がズバ抜けていた。
そう、私が絶対に超えられない壁。
夢を断たれて間もないこの頃、彼女の存在は余計鼻についた。
いつも一緒にいる(友達)の美佐子とはるかを連れて、直に確かめに行く。
背後から様子を窺うと、あいつは呑気に絵を描いていた。
一瞬目に入れただけでもわかる。間違いなく水嶋の横顔だった。
水嶋辰巳。
勉強と運動、容姿と家柄すべてが中の上。
でも性格が良く、いつも明るくて、クラスの中心。
『なに書いてんのー? 見せて見せてー!』
美佐子がノートを取り上げると、最初は取り返そうとしたが、あきらめて恥ずかしそうに顔を伏せる。
『タツミじゃん? ね、これタツミだよね?』
『…………』
『あんた、まさか好きなの?』
『…………』
はるかがいくら尋ねても、彼女は頑として認めない。