ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



『いくら頭良くても、その見た目じゃ……ねぇ、サヤ?』

『わかんないよー。訊いてきてあげる!』

『ヤメテ! お願い……』

私はノートを水嶋に見せた。すると彼は、まんざらでもない顔をして絵を見ている。

ありえない。ブスでいつも独りのあいつと、人気者の彼が。

ありえない。このとき見つけたんだ。生きる活力を。

超えられない壁はぶっ壊してやればいい、と。

新たな操り人形に彼を選んだ。

好きでもなんでもないけど、私たちが付き合えば、あの女の心に大きな穴が開く。

それが目的だった。

何度か街でスカウトに声を掛けられたし、ナンパは日常茶飯事。学校にだって何人も私のことを好きな人がいる。

オチないわけがなかった。

『彩矢香、僕と付き合ってくれないか?』

エサを撒きはじめてからたった1カ月。自分の思い通りになる快感はクセになる。

そして、私は決して自分の手を汚さない。

大貫幸恵と上村康文が同じ小学校であることを皆に話すと、いじめっ子気質の尾堂直哉が真っ先に行動した。

これが“あれ”、すなわちいじめだ。

あの女が貶められ、蔑まれ、孤立していくのはいい暇つぶしになった。

同時に、いかに人間が愚かであるかも知れる。

自分を含めて、誰も信じない。(友達)も(恋人)も要らない。

そう心に決めたから、罪悪感なんてなかった。

いつか復讐されるかもしれないという恐怖すら皆無で、悪意の所業を尽くす日々。

だけど、中3の冬を迎えた頃にまたも壁にぶち当たる。



 
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