ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



一応。でも、どこかで期待を持って問いかけた。

『まだ高校決めてないんだよね……』

つもり。すると父は、

『何かやりたいことはないのか?』

と、究極の一言。

大声で叫べばよかったのか。

『お父さんの会社を継ぎたい!』

なんて、泣きながら。だけど、

『無いよ……』

言えなかった。

答えは一本調子の“自由”で、私の将来は完全に路頭で迷う。

『高校はどこに行くの?』

不思議なもので、(恋人)はすっかり彼氏になっていた。

穏やかで優しい辰巳にいつしか心を許していたのだ。

『まだ決めてない。たっちゃんは?』

『じゃ、僕も決めてない』

『なにそれ!』

『……彩矢香と同じトコに通いたいから』

『…………』

ほだされていた。誰も信じないと決めていたのに。

彼との将来を描いてしまったとき、重大な過ちに気付く。

『大事なのは高校や大学よりも、早く結婚して家庭を持つことだ』

いつの間にか、親の敷いたレールに乗ろうとしている自分がいる。

プライドだけは崩れていなかった私。このとき辰巳と別れることを決めた。

もちろん、彼は突然のことで驚いていたけれど、引かれる後ろ髪をバッサリ切った。

絶対に結婚はしない。その覚悟に、良い思い出はひとつだけでいい。

帰り道の河川敷。そこで交わした辰巳との初めてのキスは、最初で最後の愛だった。



 
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