ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



『さてと……これを見れば、言葉は要らないわ』

宝泉彩矢香はバッグからDVDのケースを取りだした。

目に入った瞬間、私は顔を背ける。

『な、なに⁉』

見るからに卑猥なパッケージだったからだ。

『よく見たほうがいいわよ。これがあなたのお母さんの正体なんだから』

『ッ⁈』

そろりと視線を戻すと、そこには。

『ぁ……』

前をはだけさせた紫陽花の浴衣を着る女性。

胸の大きさや形、ホクロの位置が母とそっくり。

さらに、

『そ、そん……な゛』

顔は、母そのもの。

『でさ、俺らにお前の母ちゃん紹介してくれないかな?』

山口が、落ちる肩に負荷をかける。

『AV女優とヤるなんて、男のロマンだろ?』

『…………』

すべてがつながった。

男に快楽をひけらかす仕事を過去にしていたから、堂々と外へ出ないし、親戚がひとりもいないんだ。

私は、そうして得た収入で養われていたのか……。

『黙っといてやるよ? 学校にも、近所にも。だから、お前の母親とヤらせろって』

許せない。黙っていた母も、知らなかった私も。

そして、こいつら。

『絶対にイヤだ! 母には手出しさせない!』

だって、それでも私のたったひとりの家族だから。

『そっか……じゃ、この話はなかったことにしてやる』

『ぇ⁉』

意外だった。いや、これが成長。

ちゃんと気持ちを口にすればわかってもらえるものなんだ。

『ぁ、あり…』
『なわ゛けねぇだろ!』

突然、山口は力づくで私を押し倒し、白い砂ぼこりを立てて畳が揺れた。

すぐさま腰に馬乗りになり、他のふたりが腕を封じる。



 
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