ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



まだ全貌は見えない。

「ハァ……ハァ……」

ゆっくり、一歩また一歩。

「ハァ……ン゛ッ……」

冷たく乾いた空気が喉につっかえても、さらに一歩。

また一歩。

そして、ようやく明かりの圏内に入った。

瞬間!!!!

「キヤ゛ァ゛――――ッ!!」

一帯に轟く、彩矢香の悲鳴。

「ミ゛……ミサコ⁈」

急襲する氷点下の絶望は、秒速で凍りつかせた。

救いたい、という思いを……。

「ミサコッ゛!」

青白い肌に黒い涙を流す彼女の生首が、2つの玉の上にポツンと置かれ、手足は切断されて、木の枝を模したように突っ立つ。

それは、真っ赤に染まった人間雪ダルマ。

悲愴と血の臭い漂う、変わり果てた姿だった。

「う゛ぅ!」

むごい。むごたらしい。

身体の内側から込みあがる震えに、僕はえづく。

彩矢香にいたっては、その場にへたりこんでうつむいたまま。

故に、おそらく見ていないだろう。

無惨な亡骸となった美佐子の傍らにそびえる木。

その幹に記された

【イジメの末路】

という血文字のメッセージを。

「くッそ……」

悔しい。

終わらせる方法にたどり着いていながら、彼女を死なせてしまった。

その現実から目を背けたくて、僕は瞼を閉じて唱えてみる。

幸せだったあの瞬間に戻れ。

目覚めればそこに彩矢香の美しい寝顔があった、あの時間に。

と——。



 
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