ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



車に乗ると、彩矢香はまず携帯を接続し、誰かに電話をかける。

『もしもーし』

出たのは美佐子だった。やけに明るく感じるのは、車内に大音量で響いているからか。

『何してんだ、今』

『ぁ、タツミ? いま化粧中! 群馬、どうだった?』

少し早く着きそうだから会って話せるかと尋ねたが、

『ごめーん! これから美容室で、そのあと同伴なの』

と、危機感がまるで感じられないふざけた答えが返ってくる。

僕らは、一度家に帰るのも面倒だと、そのまま美佐子が働く店のある池袋に向かうことを決めた。

『じゃ、上がったら連絡するね!』

遊ぶ約束でもしているかのようなテンションで通話を切られ、僕らは鼻で笑いながら顔を見合わせる。

「相変わらずだな」

「……だね」

こちとら楽しい話で盛り上がれる心持ちもなく、僕はふと、コートの内ポケットから“あれ”を取りだす。

『あなたたちの周りでこの人を見かけたらすぐに報せて!』

帰り際に息もつかぬ言葉で、沙奈から渡された大橋敬太の写真だ。

冴野将輝=大橋敬太=謎の失踪

彼は何故に愛する家族を残して消え、磨理子が再び甦ったのか。

「何を考えてるの?」

今なら本心を言える。

「ん……この人、もう死んでるんじゃないかな」

「どうして?」

これが、最もつじつまが合う。

「この人がいたから、伊達磨理子は消えた。ってことは、この人がいなくなったから…」
「伊達磨理子が再び現れた?」

そう考えるのが妥当だ。



 
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