ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



都内有数の繁華街の一つ、池袋。

週の初めであることと天気もあいまって、ひしめき合うほどの人のはいない。

「まだ時間もあるし、何か食べようか」

「うん、そうだね」

街の真ん中にある割高なコインパーキングに車を停め、僕らは雪が降りしきる空の下に立った。

僕は、後輪の辺りを覗きこみ、携帯を貼りなおす。

「何の目的で付けたのかな?」

その様子を、怯えた表情で覗きこむ彩矢香。

「わかんねぇ……」

今のところ、それだ。

犯人を泳がせるための画策が終わり、足早に店を探す。

すぐ近くにあった、外装から洒落ていて、落ち着いた雰囲気のある創作居酒屋。

いかにもSNS映えしそうなメニューが店頭に並んでいたが、ただ単純に雪が服に浸みこむのがイヤで即決する。

「ここにしよう」

もちろん、レディーファーストは忘れない。

——カランッカランッ。

「ありがとう」

暇を持て余していたのか、すぐに応対する若い女の子。

僕らを見るや、迷うことなく個室に通した。

彩矢香の好みを中心に注文し、お互いソフトドリンクでの質素な乾杯。

さて、せっかく時間があるのだから、犯人を洗う時間に費やそう。

僕はまず、畑山に電話をかけた。

沙奈の言った「お友達」という観点では、先生が真っ先に除外される。

だが、この一連の事件に最も関与している人物であること、どうせ電話はつながらないのだから、一番目の捨て駒として最適だと思って。

『はぃ』

ところがどっこい、出やがった。

たった一言でもわかる。教壇に立っていた頃とはまったく違う声の張り。

『水嶋です。先生、釈放されたんですね』

『ぁ、あぁ』

直哉が殺された夜は第一発見者。亮平の時は重要参考人。はるかの件では被疑者。

そう簡単に拘留を解かれるはずがないのだが……。



 
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