ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
父親の死に立ち会えない、哀しき籠の中の鳥。
聖矢の部屋の前で僕は、声を掛けるべきか否か迷っていた。
事実を知ってしまえば、またも激しく暴れて、翼が折れてしまう。
そこまで追いこむ必要はないと、お悔やみの気持ちと共に静かに置いてくる。
テレビの前に戻り、熱いコーヒーをすすりながら、今日も取り上げられる彼らを見ていた。
《『昨日だけで10万件ですか!?』
『えぇ、そうなんです。学校が昼休みの時間帯にはアクセスが集中して、一時サーバーがダウンしたほどです』
『すごいですねー』》
絶対正義であるはずの警察は、テロリストには屈しないという名目で、相変わらず報道規制を敷いて連続殺人死体遺棄事件の進行をひた隠す。
世間は、その犯人らしき集団を英雄視する。
恐怖政治と声を上げようが、復讐の騎士団は、たった数日で10万人近い弱き者を救ったのだ。
十分すぎる成果を得た、革命の第一歩。
すなわち、これ以上僕らが犠牲になる必要はない。
「帰ってきた……」
通販番組が始まる中途半端な時間に、彩矢香の車が大所帯を引き連れて敷地に入ってくる。
2台目の霊柩車から棺を運びだし、僕は玄関のドアを開けて迎えた。
「彩矢香……」
「…………」
悔しさを超えて、怒りにも似たその表情。
マスコミへの対応や、簡単な会社の引継ぎ、そして魂を抜かれたような母親の介抱。
すべての疲れと哀しみを汲み取り、無言で抱きしめた。
「僕が彩矢香の支えになるから」
「……っ゛」
悔しそうに涙をこらえていた。
僕の背中に手を回す力もないほど弱っているのに、必死で耐えるように。