ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
通夜の準備が進められる中、僕は昨夜のあらましを彩矢香に話した。
「ここもそう。手鏡だって全部、あの時間になったら割れてたんだ。助かる方法が1つもないっていうのは本当なのかもしれない」
彼女の沈んだ顔に恐れが加わり、夜叉のような表情になっていた。
鏡がなくて良かった、と僕は思う。
「じゃ、ヤスは……」
「うん。斎藤さんから今朝電話があった。箱根で見つかったって」
「……そう」
意外にさらりと受け流した。
あれだけ親身になって助けようとしていた彩矢香も、父親が死んだ今の状況では、ショックも半減しているのだろうか。
自分の手で作った偽りの証拠を、自分の手で隠滅しようとする僕に、
「もうすぐ親戚の人が来るからお願いするわ。そろそろ家に帰ったら?」
と、彼女は僕を遠ざけようとする。
——コンッ、コンッ。
黙ってついて行った2階の部屋。そこにノックは必要ない。
何故なら、昨日から壊れたままだから。
しかし、彩矢香は弟を気遣った。
「聖矢、落ち着いて聞いてね」
——……。
「お父様が亡くなったの……」
いや、顔を見て話すのが辛すぎたのかもしれない。
——カチャッ。
「……ホント?」
さすがに、涙を浮かべる聖矢があれから初めて顔を出した。
「本当よ。お姉ちゃんは色々と忙しいから、お母様の傍に居てあげてくれない?」