ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
——コンッ、コンッ。
誰かが扉をノックし、僕は焦って時計を引き出しに隠した。
「はい」
どうせ嫌味を言いに来た母だろう。
「入るぞ」
「ぇ⁉」
ちがう。父だ。
——ガチャッ。
「な、なに⁉」
小学以来。父とこの部屋で対面するのは。
「少し話がしたくてな……」
ベッドの上に座り、視線は机の上に向いている。
でも、あの時計について何も言ってこない。僕も言わない。
——……。
「「…………」」
話がしたいと言ったわりに、長い沈黙が続く。
しびれを切らした僕が、ケンカ腰で問う。
「だから、何⁉」
「……今から通夜に行ってこようと思ってな」
「で?」
「…………」
この時間がムズがゆく、蕁麻疹を発症しそうだ。
「あれだ。彩矢香さんを支えてやれ」
「は⁉ 僕みたいな小者が?」
「…………」
どうしたってこうなる。父との関係は修復不可能な域に達していた。
「あとな……金は出してやるから、独りで生きていけ」
断絶の捨て台詞を吐き、立ち上がった。
「わかったよ! 出てってやるよ!」
その背中に、ありったけの恨みをぶつける。
「絶対にあんたを超えてやるからな゛! 金も地位も権力も、全部あんたの上をいく! その…」
ために、彩矢香を取り戻すと決めた。
「とに゛かく! 僕を拒絶したことを後悔させてや…」
——バタンッ。
「るからな!!」