ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
AM 2:42
あの公園の脇に停車。
ここは、毎夜現れる戦慄がはじまった場所だ。
終わりも同じ公園にすることで、この一週間に起こった悲劇をキレイに切り取れる気がした。
わざわざこんなにも不気味な場所を選んだわけだが、彩矢香の異論はない。同じ思いでいるのだろうか。
「3時になったら出よう」
「……ぅん」
大粒の涙を流して、すでに泣いている。
彼女の、死ぬかもしれないという恐怖は計り知れない。
「大丈夫……きっと大丈夫!」
だからこそ力いっぱいに抱きしめて、それを壊そうとした。
「あ゛り゛がとう……たっちゃん」
礼には及ばない。これも演出。
「彩矢香……」
彼女は、僕の裏の顔を知らない。
「たっちゃん……」
視線を合わせ、ゆっくり口唇を近づけると、彩矢香は静かに目を閉じる。
そして——。
柔らかな温もりが身体中を流れ、中学時代にふたりで座ったあの河川敷が甦る。
ついに、止まっていた時間が動きだした。
いま僕らの間には、誰にも邪魔できない愛がある。
大貫幸恵の復讐がまもなく終焉を迎えるのだ。
AM 3:00
「行こう」
持ち物はたったひとつ。
バーキンから鏡を取りだし、車を降りる彩矢香。
「それ、買ったの?」
横に支柱が通っていて、丸い鏡が回転する置き型。
彼女の周りで見た記憶がない。
「お母様の。黙って持ってきた」
どうりで。さすがに母親の寝室は探索していない。
直哉が立った木は、公園の入口から一番奥にある。
どんどん暗がりが濃くなっていくにつれ、氷点下に近付く体感温度。