ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
おでましだ。地獄よりの使者、伊達磨理子。
——ズザザザザザザザザッ。
またの名を、呪いの化身。
——ザザザザザザザザッ。
電灯が作り出した影の中から、のそりのそりとカノジョは現れた。
——ズズッ。
肘から上を地面に突っ立て、
——ズザザザッ。
胴体を這わせる。もう一つの腕で、
——ズッ。
——ザザザザザザザザッ。
同じように。
薄汚れた白装束の先端に見える肩が激しく動き、
——ズザザザザザザザザッ。
前進を繰り返す。
「も゛うィャ……」
限界を迎えた彩矢香は、その場に座りこむ。
「鏡を゛! 早くッ!」
彼女の長い髪が小刻みに震えていた。
もう、これ以上のシチュエーションは無い。
呪われし禁断のゲームを始めた理由が、まさしくここにあった。
誰もが知る心理学、その究極形。
【吊り橋効果】
元々愛し合っているふたりならどうなるか……?
さらにこの手を強く握るように、彩矢香は僕から離れられなくなる。
そうだ、もっと震えろ。
伊達磨理子が這い寄るほどに、僕らの永遠が近づくのだ。
——ズズッ。
——ズザザザザザザザザッ。
「っ、ぅう゛……」
「しっかりしろ゛ッ!」
彼女とカノジョの距離は5メートル。
十分だ。十分、この僕の存在感を思い知ったことだろう。
彩矢香が死んでは元も子もない。
「お゛い!」
顔を覗きこんだ僕は驚愕する。
「ぇ゛⁉」
彼女は、恐くて震えていたんじゃなかった。
「彩矢……香?」
笑いをこらえていたんだ。
「フンフフフッ……ハハハッハハッ」