ひとりきりの夜に。


彼の嘘を信じて、彼の帰りを信じて。
私は今日もただひたすら、彼の香りと残像が残る部屋で彼の帰りを待つ。




おかえりなさい。


そう言うと、





ただいま。早く会いたかった。




そうテンプレ通りの言葉を言ってくれる彼を。






第三者から見れば嘘か真実かは明確だ。

だけど、当事者からすれば自分が真実だと思い込めば嘘も本当になる。


その嘘を信じられるか、信じたいと思うか。

信じたい、信じる。
そう決めた時から嘘はきっと真実になる。




彼からは、私が知らない甘ったるい香りがほのかにした。

お客さんが酔っ払って、介抱してあげてたんだ。
うん、きっとそう。
絶対にそうだ。




今日は大変だったんだよ。
お客さんがすごい酔っちゃってさー。



彼の綺麗な唇が動く。
彼のケータイの画面には、新着メッセージ。


今日は楽しかった!マサトのこと大好きだよ。









彼は嘘をついていない。










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