こけしの恋歌~コイウタ~
成瀬課長がからかって遊んでるとはいえ、それをよく思わない女性社員がいてもおかしくないはずなんだけど。

その相手がこけしである私だから、特に嫌がらせをされたり、やっかみを言われたりすることは一切ない。

決して恋のライバルだなんて、誰もそんなふうに私を見ていないっていう証拠。

それはそれで女としてどうなんだろうって多少は思うけど、私も自分自身のことは理解している。

成瀬課長の横を並んで歩けるような、そんな器の持ち主ではないことくらい。

こんな不毛な恋、諦めよう、忘れようって何度思ってみても、なかなか実行には移せないでいる。

しかも成瀬課長はこんなふうに私の心を掻き乱すようなことをしてくるから、たちが悪い。
時々悪魔なんじゃないかと思ってしまう。

こんなふうに顔を近づけてくるなんて…。

「元気モリモリですよ。それより課長まであだ名で呼ばないでくださいよ!」

成瀬課長は周りのことをよく見ている。
そんなところもモテ度が高い理由なのかもしれないけど。

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