こけしの恋歌~コイウタ~
トラブル発生
洗面台の鏡に映る自分の顔を見て、愕然とした。

こけしの顔が青白い。
ホラーだ。
泣き顔もなかなかのホラーだったけど、この青白さは別の意味でマズイ。

今日は金曜日。

時刻は午前7時。

これから派遣の仕事に行かなくては…。

仕事に穴を開けるワケにはいかない。
どんなハードな生活だとしても、これは私が選んだ道。

目の下のクマはコンシーラーでなんとかなった…。
成瀬課長にはバレてたけど。

顔色はファンデーションを塗りたくったところで、厚化粧が悪目立ちしそう。

…マスクしよう。

風邪気味でって最もらしい理由でイケるはず。
なるべく成瀬課長に接触しないようにすれば大丈夫なはず。

私は出社して、朝あれこれ悩んだ時間がもったいなかったと、ガックリ肩を落とした。

壁に掛けられたホワイトボードの予定表に書かれた、『成瀬課長 出張』の6文字を凝視してしまった。

「私、なにやってるんだろう」

こけしの呟きなんて、誰も聞いてはいない。

マスク姿のこけしなんて、誰も気にしない。



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