こけしの恋歌~コイウタ~
「こけしちゃんはなにを着てくるの?」

突然服装のことに触れられて、驚いてしまった。
去年は動き回れるように、パンツスーツを着ていた。
謝恩会なのだから、もう少しきれい目な格好をしても良かったけど、私にはパーティードレスが似合わない、そう思って、パンツスーツを選んだんだと思い出す。

「今年もパンツスーツ…」

去年と同じで、今年もパンツスーツを着ようって考えていることを言おうとした途端、課長の言葉に遮られた。

「却下。ちゃんとドレスアップして」

「私にはパーティードレスとか似合わないですよ」

「ダメ。そんなこと言うなら、俺が手配する」

いやいやいや、何を言ってるんですか!?
課長は真顔で言うもんだから、冗談ではなさそうだけど、相手はこけしの私ですよ~。

「私をからかって遊ばないでくださいよ。どう取り繕っても華やかな場所は私には似合いませんし。それに当日は裏方の仕事で忙しいんですから、動きやすいほうがいいでしょう?」

俺が手配するなんて、さらっと心臓に悪いこと言わないでほしい。

課長はわかってないんだろうか。
男の人が女の人に服を贈る特別な意味を。
そのくらい、こけしの私でも知ってるつもりなんだけど、深く考えすぎなんだろうか。

「却下って言ったよね。決定事項。さてと、早く資料探そうか」










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