こけしの恋歌~コイウタ~
成瀬課長、私の話、聞いてますか?
決定事項ってなんですか?
服を贈る意味、わかってますか?

言いたいこと、聞きたいことはたくさんあるのに。

課長はさっさと探す資料の一覧表を片手に、広い資料室の奥の方に行ってしまった。

心の中で盛大なため息をひとつついて、とにかく今は仕事だと言いきかせる。
頭をフル回転させて、ひとつ、またひとつ、資料を探し回る。
あっちを探したり、こっちを探したり、忙しなくパタパタと資料室の中を歩き回る。

いつもは、これくらいの資料探し、ひとりでさっさと片づけてしまうのに…。

どうしてこんなに時間がかかってしまうんだろう。
時計は午後3時を指している。
仕事を始めてすでに2時間が経っている。

「全然終わらない…」

手元の一覧表の半分しか資料は揃っていない。
おでこにうっすら浮かぶ汗をハンカチで拭う。
気合いを入れ直して、一度深く深呼吸する。

私の要領が悪いのか。

頭の中に課長が浮かんでは消えて、集中出来ないからか。

同じ空間に課長がいて、緊張してしまってるからか。





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