こけしの恋歌～コイウタ～
こけしちゃんの秘密
足早で１階の正面玄関を出ると、停まっている黒のワンボックスカーの後部座席に乗り込む。

「高畑さん、遅くなってごめんなさい～」

助手席に座る高畑さんにぺこっと頭を下げた。

「円香ちゃん、お疲れ様」

ニコニコと笑って出迎えてくれるマネージャーの高畑さん。
高畑さんは３０代後半で、パンツスーツを着こなしたカッコいい女性。

「円香ちゃん、ちょっと急ぐね～」

運転席に座る西田さんはそう言って、グッとアクセルを踏んだ。
西田さんも３０代後半で、Ａ級ライセンスを持つ運転のプロ中のプロ。
茶髪で見た目はホストっぽい。

「今日は打ち合わせだけだから、すぐ帰れると思うよ～」

「了解でーす」

高畑さんはそう言って、打ち合わせの資料に目を通している。

私はバッグからポーチを取り出して、ざっとメイクをし直し、濃い色のサングラスをかけて、つば広の帽子を目深にかぶった。
なるべく顔が見えないように。







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