こけしの恋歌~コイウタ~
「こけしちゃん、広報部にこれ持って行って~」

「こけしちゃん、会議室の鍵開けてきて~」

「こけしちゃーん!」

そうそう。
これが日常茶飯事。

総務部に戻ると、みんな私の顔を見てギョッとしていたけど、なにも触れないでいてくれた。
今はそれがありがたい。
なにか言われたら、また涙が出てきそうだから…。

それに今総務部は忙しい。
通常業務に加えて謝恩会の準備をしなくてはいけない。
課長が海外出張でいないこともあって、人手が足りない。
みんなてんてこ舞いになりながらも、なんとか仕事をこなしていく。

この忙しさが今の私にはありがたかった。
次から次へと仕事が舞い込んでくる。
集中すれば、周りの音は聞こえない。
資料室での出来事も、課長の噂も、頭の中の隅っこに追いやることが出来る。

社内をあちこちと歩き回る。
時には謝恩会の会場となるホテルに出向き、打ち合わせに参加する。
合間に備品管理とデータ管理の仕事もこなしていく。

一日、二日と、そんな毎日を過ごしていく。

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