こけしの恋歌~コイウタ~
「ようやく明日課長が戻ってくるって~」

「はぁ~、良かった~」

「やっぱり課長がいないと、総務部はまわらないよ~」

あちこちで安堵の声が上がる。

明日課長が戻ってくる。
ホッとしながらも、ざわつくような気持ちもあって、心はぐちゃぐちゃになっている。
身体と心がバラバラになるような感覚に襲われる。

どんな顔をして会えばいいのだろう。
いつも通りでいられるだろうか。

現実を突きつけられることが怖い。
けれど、確実に明日はやってくる。

覚悟を決めなくっちゃ。
課長のことは諦めよう、忘れよう。
この想いは心の奥底にしまって蓋をすればいい。


定時を過ぎて帰り支度をしていると、スマホが鳴った。

『至急事務所に来て下さい』

高畑さんからのメールになにか嫌な予感がした。

今夜はサクラの仕事は入っていない。
明日に備えて早めに帰宅するつもりだった。

折り返し電話しようかとも思った。
けれど、何故か躊躇われて一刻も早くと、音楽事務所に走って向かった。


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