こけしの恋歌~コイウタ~
これからのことを考えると、一体どうすればいいのか途方に暮れてしまう。

このまま会社に居るワケにはいかない。
家族にも迷惑をかける。
レコード会社、サクラの歌に関わっているスタッフの人たちにも。
なにより、こんなサクラの歌を聴いてくれている人たちにもう二度と歌を届けることが出来なくなる。
社長や高畑さん、西田さんには今以上に大変な思いをさせてしまう。

そして、成瀬課長…。
こんなことになるなら、もっと早くに諦めて忘れてしまえばよかった。
最初から不毛な恋だと、どうにも実る可能性のない恋だとわかっていたはずなのに。
どうして好きになることを止められなかったんだろう。
しかもキスされてしまって、心の傷は深くなるいっぽう。

課長のことを想うと、今まで我慢していた涙が一滴頬を伝った。

社長と高畑さんは私が記事を読み終わるまで黙ったままだった。

「この週刊誌、いつ発売するんですか?」

私は全て読み終えると、社長と高畑さんに向き合った。
これ以上涙を流さないように、しっかり前を見据えて、顔を引きつらせながらも、苦笑いを浮かべた。


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