こけしの恋歌～コイウタ～
謝恩会
朝５時に鳴るようにセットした目覚ましの音で、いつもより重い瞼を開ける。

昨夜泣き腫らした目をアイシングしながら、どうやら泣き疲れて途中で寝てしまったようだ。

恐る恐る鏡を見ると、思ったよりも顔はスッキリして浮腫みもなくホッとする。

これなら何とか会社に行けそうだ。

朝の支度を整えていると、高畑さんが迎えに来てくれた。
時計の針は午前６時半を指している。

今日の出勤時間はいつもよりだいぶ早い。

急遽みんなが出社する前に集まることになったからだ。

午前７時、会議室に続々と人が入ってくる。
その面々を見て、私の顔色は青くなった。

人事部長、総務部長、広報部長、営業部長、派遣会社の担当者、社長、高畑さん、そして私。
しかも少し遅れて常務まで入ってきた時には、生きた心地がしなかった。

重苦しい空気の中、社長が口を開いた。

「この度は、弊社所属の桜庭円香のことで、早朝にお集まりいただきまして、誠に申し訳ございません。昨日お話させていただきましたが、今週の金曜日にサクラ、つまり桜庭円香の記事が掲載されます。御社にご迷惑をおかけすることになりまして、大変申し訳なく思っております。重ね重ね、お詫び申し上げます」

社長が頭を下げるのを見て、私は立ち上がり、深く頭を下げた。

「本当に申し訳ございません」

これ以上の言葉が見つからない。
私はただひたすら謝ることしか出来ない。

隣にいる高畑さんも立ち上がり、同じように頭を下げている。

私は胸にグッと込み上げてくるものを必死で堪えて、唇をきつく噛みしめた。




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