こけしの恋歌~コイウタ~
そこに立っていたのは…成瀬課長。

課長は謝恩会の司会進行をしている。

ここ数日全く会えなくて、資料室での出来事以来、ようやく課長の姿を目にした私は、思わず高鳴る胸に手を当てた。

課長への想いを無かったことには出来ない、すぐには忘れられそうにはないと確信してしまう。

それでもいつの日か、こんな片想いをしていたと懐かしく思える時がくるのかな。

目を閉じてみても、今は聞こえてくる課長の声に、どうしてもドキドキが止まらない。

課長の司会で謝恩会は滞りなく進んでいき、残すは最後の営業部担当の罰ゲームだけになった。

罰ゲームというのは、ふたつのボックスの中に参加している人の名前と、罰ゲームの内容が書かれた紙がそれぞれ入っていて、引き当てられた人が罰ゲームをするという単純なものだった。

営業部の巧みな話術と、ドキドキやヒヤヒヤする罰ゲームの内容に、去年以上の盛り上がりを見せている。

もう少しで謝恩会も終わる。

同時に私の派遣の仕事も終わる。

盛り上がっている会場の雰囲気とは正反対に、私は涙を流さないように必死に我慢していた。

ぼーっと壇上を眺めていると、高畑さんが私の肩を叩いた。

「円香ちゃん、名前呼ばれたよ」

「へっ?」

我に返ると、営業部の人が「総務部、桜庭円香さん」と私を呼んでいる。

もしかして、私が罰ゲーム!?



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