夢色メイプルシュガー
「どうして?」
「ん?」
「あっ」
心の声が口をついて出てしまった。
「んー、そうだなぁ......。上手く言えねぇけど......」
私は息を呑んで見守る。
「俺の夢は俺のもんだから。それしかないかな?」
「……っ」
夢は……俺の、もの……。
自分のもの......。
「ちぇ、もうついちったか」
へ?
黒木くんの声にはっと意識を取り戻したら、そこはもう職員室の目の前だった。
「涼岡といたら時間経つの早いなぁ」
「なによそれ」
黒木くんってば本当、おもしろい。
私は黒木くんの後に続いて、職員室の中へ入っていった。
「また明日」
「おう!」
用事を済ませた私たちは、ささやかな挨拶を交わす。
バスケ部の黒木くんは、そのまま部活に行くらしい。
軽く微笑み手を振ったあと、私はくるり、ある場所に足を進めた。