夢色メイプルシュガー
「小学生の時、初めてテストで100点をとって……それをお父さんとお母さんに見せたら、すっごく喜んでくれてね?」
『芽衣、すごいじゃないか』
『よくやったわね』
そう言って、お父さんは優しく頭を撫でてくれて。
お母さんは、ぎゅっと私を抱きしめてくれたんだ。
「それが本当に嬉しくて、嬉しくて。また、次も喜んでほしい、って勉強し続けたの」
初めは、“やらなきゃ”だった勉強が、いつしか“やりたい”に変わってた。
好きとか、嫌いとか。
そんなことを考えるより前に。
そして──。
「……いつの間にか、するのが当たり前になってた」
日常の一部。
そんな言い方が、正しいのかもしれない。
「人のためになんて、しんどくない?」
「全く。だって、頑張って頑張っていい結果が出た時って、自分もすっごく嬉しいでしょう?」
……ううん、それだけじゃない。
「たとえ点数が思うようにとれなくてもそう。何かに向かって努力できたっていう事実だけで、私は充分な結果だと思うの」
──はっ。
「ごめんなさい、私……」
また語りすぎちゃった。
「いや。……芽衣の両親って、何やってんの?」
「えっと……お母さんは弁護士で、お父さんはお医者さまだけど」
なんでそんなこと?
思いながら、流れのままに答えた。