夢色メイプルシュガー
──ドクンッ、ドクンッ。
……あ。
ピタリと立ち止まったその時、自分の心臓が、異様なまでにうるさく音を立てていることに気づいた。
“多目的室”
そんな文字が大きく目に入ったからだ。
ああ、やっとこの時がきたんだ……。
湧き上がる高揚感が、全身を包み込むように支配する。
落ち着け、落ち着くのよ、私。
言い聞かせて息を吐く。
だけど、自然と上がる口角はどうにもできなくて。
……よし、誰もいないわね。
入念に辺りを見回し、私は緩んだ頬をそのままに、そっと目の前のドアをスライドさせた。