夢色メイプルシュガー
「ちょっと、ごめんね」
私はファスナーを開け、黒いそれから鳴りやんだばかりのケータイを取り出す。
……メール?
誰からだろ。
「……っ」
開いた瞬間、目に飛び込む三文字の名前に、ピクリと身体が跳ねた。
『返信遅くなってごめん。
大丈夫、気にないで。
それじゃあまた今度、誘わせてもらおうかな。
了解です。
彼とのこと、勝手に勘違いしちゃってごめんね。
また、ゆっくり涼岡とお話できたら嬉しいです』
乾先輩……。
「誰?」
「えっと……の、希美よ」
「ふーん」
あれ?
何で私、嘘ついちゃったんだろう。
別に隠さなきゃいけないことでもないのに。
……ま、いいか。
元の場所にケータイをしまった私は、再びフォークとナイフを手に取った。