夢色メイプルシュガー
体育館の入り口で靴を履き替えながら、私は苦笑いで答える。
「あの人は乾先輩って言って、中学の時の先輩よ。ほら、前に私、生徒会入ってたって言ったでしょう? その関係でお世話になったの」
「ふむふむ。それで深く関わっていく内に、恋に発展しまったというわけだね」
「へ!?」
どういう解釈をしたらそうなるの!
これまたぶっ飛んだことを言ってのけた彼女に、目が点になった。
「だから、乾先輩はそんなんじゃないんだってば」
優しくて、頼りになって、大好きな先輩だけど。
それはただの憧れ。
恋心とはたぶん、違うんだと思う。
「そーなのー?」
「そう。だからこの話は、これでおしまいっ!」
「えー。でもでも、居眠り王──」
「“でも”じゃない」
ぶーっと頬を膨らませる希美を軽く睨みつけ、私は強制的に会話を終了させた。