夢色メイプルシュガー
「カレカノみたいだねー、メイメイと宗谷くん」
そうムフフッと笑い混じりに言った、希美。
肘で私の背中を、グイグイとつついていたのだ。
というか……。
「“カレカノ”って?」
「えー、うそ知んないの!?」
私が訊ねると、希美の顔は驚愕の表情に変わった。
……みんな知ってることなのかな?
残念ながら私の中の辞書には、そんな言葉は存在していない。
「彼氏と彼女ってこと」
くるんと口角を上げてから、語尾にハートが見える調子で希美が答えた。
それを聞いた私は、“そうなんだ”と驚くと同時に。
「えぇっ……!?」
思い切り、声を轟かせてしまった。
とっさに口を押さえるも、時すでに遅し。
──ザワザワ。
どうしたんだ、という視線がいくつも私に集中していた。
「も、もう、冗談はやめてよ」
ちょっぴり恥ずかしくなって、ごまかすように声を上げる。
私は希美の背中を押しながら、いそいそと端っこの方へと移動した。