夢色メイプルシュガー
「言いたいこと、ちゃんとあったんだけどな……。ごめん。たった今、なくなった」
「へ?」
ポカンとする私に、先輩が続ける。
「悔しいけど……負けちゃったか、俺」
負け?
「あ、あの──」
「もっと早くに言っとけばよかった」
「……っ」
どこか淋しげな顔だった。
先輩がなんのことを言っているのかはわからない。
けれど──。
思わず息を呑むと、すぐさま「あ」と小さな声が響いた。
「一つ、言いたいことが見つかった」
先輩は優しい目だけはそのままに、表情を引き締めて言った。
そして。
「もっと、素直になれよ」
「す、なお……?」
思わぬ言葉に聞き返してしまう。
「ああ。涼岡って、意外と素直じゃないからなー。ずっと本当の想いを隠したままだと、いつか痛い目見るぞ?」
ドクン、心臓が撃たれたみたいだった。
私が口を挟む間もなく、先輩はすぐにまた言葉を発した。
「彼のこと、好きなんだろ?」