夢色メイプルシュガー


……そうだよ。

私、いつの間にか忘れてた。

ううん。

わざと気づかないふりしてた。


私がなるべきなのは、弁護士。

弁護士になるために、パティシエは諦めたじゃない。

ケーキ作りはもうしないって、そう決めてたじゃない。


だから〈plage〉に通うことを、やめたじゃない。


心のキラキラを、思い出さないために。


なのにあの日私は──。


でも、もう大丈夫。



「聞いてるの、芽衣」

「……から」

「え?」

「もう、やめるから……」


──安心して。


「心配かけて、ごめんなさい。これからはちゃんと、勉強するから」


今度は、はっきりとした声で答えた。

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