夢色メイプルシュガー






「……んんっ」


小鳥の囀りが、微かに耳に響く。

カーテンのすき間から零れる光線に、私はたまらず目を開いた。



リビングに降りると、お味噌汁と目玉焼きがテーブルの上で迎えてくれた。

お母さんが作っておいてくれた、私のための朝ごはんだ。


いつも、そう。

私が目を覚ます頃には、お母さんも、お父さんも、とっくに仕事で家を出ていて。

朝は決まって、ひとりぼっち。

そんな、ひとりきりの広いリビング。


今日は特別、広く感じられた。



「ごちそうさまでした」


朝ごはんを済ませた私は、テーブルの上に置いてあるケータイを一瞥する。


……宗谷くん、怒ってるかな?


昨日から何度も確認している、メールボックス。

朝になった今でも、彼からの返信は届いていない。


怒ってるかな、じゃない。

これはもう、怒ってるんだ。


あれだけお世話になっておいて、途中で投げ出したんだから、当然なのだろうけど。

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