夢色メイプルシュガー
*
「……んんっ」
小鳥の囀りが、微かに耳に響く。
カーテンのすき間から零れる光線に、私はたまらず目を開いた。
リビングに降りると、お味噌汁と目玉焼きがテーブルの上で迎えてくれた。
お母さんが作っておいてくれた、私のための朝ごはんだ。
いつも、そう。
私が目を覚ます頃には、お母さんも、お父さんも、とっくに仕事で家を出ていて。
朝は決まって、ひとりぼっち。
そんな、ひとりきりの広いリビング。
今日は特別、広く感じられた。
「ごちそうさまでした」
朝ごはんを済ませた私は、テーブルの上に置いてあるケータイを一瞥する。
……宗谷くん、怒ってるかな?
昨日から何度も確認している、メールボックス。
朝になった今でも、彼からの返信は届いていない。
怒ってるかな、じゃない。
これはもう、怒ってるんだ。
あれだけお世話になっておいて、途中で投げ出したんだから、当然なのだろうけど。