夢色メイプルシュガー


「メーイメイ!」


先生が解散を告げるなり、満面の笑みを纏った希美が、私の席まで飛んできた。


「聞いてよ! 私、前回より10位も上がっちゃった!」

「おっ、よかったじゃない。今回頑張ったーって言ってたものね」

「うん! メイメイは?」

「私は……」


キラキラと見つめてくる瞳。

ええとー、と目を泳がせてから。


「まだ見てない」


はっきりそう答えた。


「じゃあじゃあ、今から見ようよ〜」

「見ません。楽しみは後にとっときたいの」

「えー!」


どこか不満げに眉を下げる希美に、私は「ごめんね」と付け足す。

希美は、つまらなそうに顔をしかめた。


「それより、部活はいいの?」

「あっ! そうだった……。メイメイばいばーい。見たら教えてねー」

「はいはい」


思わずくすりと笑ってしまう。


「ばいばい、希美」


笑いながら、慌てて駆けていく愛らしい後ろ姿に、私はそっと手を振った。


そして、それが見えなくなった途端──一気に胸の中がざわめきだした。

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