夢色メイプルシュガー


「本当に、意味がないのかな?」

「え……?」

「私は、すごいと思うよ」


いつも寝ていて、まともに授業なんか聞いてなくて。

そんな宗谷くんが、こんな短期間で5位だなんて。

私には、信じられないほどすごいことだと思えたんだ。


「けど」

「ねぇ宗谷くん」


遮るように呼びかけた。


「……なんだ?」

「あのね」


そっと、彼の目をまっすぐに見る。



私はいつもそうだった。


隠して、隠して。

本当の気持ちは全部、心の深淵に沈めて。

平和のためだと、透明なベールを被っていた。


だけどそれはただの言い訳。

眩しい光から、“自分自身”を守るためのベール。


……それももう、今日でお終いにしよう。


──変わらなきゃ。

乾先輩に教わったから。


──変われるんだ。

宗谷くんに見せつけられたから。


“意味のないそれは、取り払ってしまえ”


そうすればもう、後戻りなんてできない。

何のごまかしもきかない。

でもいい。


剥き出しになった心が、今。

こんなにも、愉しそうに暴れている。

< 199 / 228 >

この作品をシェア

pagetop