夢色メイプルシュガー
「本当に、意味がないのかな?」
「え……?」
「私は、すごいと思うよ」
いつも寝ていて、まともに授業なんか聞いてなくて。
そんな宗谷くんが、こんな短期間で5位だなんて。
私には、信じられないほどすごいことだと思えたんだ。
「けど」
「ねぇ宗谷くん」
遮るように呼びかけた。
「……なんだ?」
「あのね」
そっと、彼の目をまっすぐに見る。
私はいつもそうだった。
隠して、隠して。
本当の気持ちは全部、心の深淵に沈めて。
平和のためだと、透明なベールを被っていた。
だけどそれはただの言い訳。
眩しい光から、“自分自身”を守るためのベール。
……それももう、今日でお終いにしよう。
──変わらなきゃ。
乾先輩に教わったから。
──変われるんだ。
宗谷くんに見せつけられたから。
“意味のないそれは、取り払ってしまえ”
そうすればもう、後戻りなんてできない。
何のごまかしもきかない。
でもいい。
剥き出しになった心が、今。
こんなにも、愉しそうに暴れている。