夢色メイプルシュガー
「芽衣。お前なら、絶対大丈夫だ」
「うん……」
真っ直ぐな瞳に見つめられたら、もう平気。
緊張も、不安も、まるで嘘のように吹き飛んでゆく。
「私、行ってくるね」
小さく呟いて、私はぎゅっと、大きなその手を握り返した。
*
昼下がり。
宗谷くんの家から帰った私は、自分の家の前に立っていた。
手には、白い箱。
言わずもがな、中身はさっき完成したばかりのフルーツタルトだ。
日曜日は、基本お仕事がお休みのお母さん。
つまり今、お母さんは家の中にいるということ。
私がこの日を選んだのも、その為だった。
……宗谷くん。私、頑張るね。
私はふう、と呼吸をし、震える手をなんとか抑えながらドアを開けた。