夢色メイプルシュガー
「懐かしい……。芽衣が小さい頃つくってくれたのと、そっくり」
「え? ……憶えて、くれてたの?」
私はぱちぱちと瞬きし、ケーキを眺めながらにっこりと微笑むお母さんに近づく。
「忘れるわけないわ」
──ドクン。
嬉しい……。
憶えててくれたんだ。
「……おいしい!」
ひとくち食べるなり、お母さんが声を上げた。
思わず頬が緩む。
と、その時。
「あれ、この味……」
「気づいた? 実はね」
とっておきの隠し味。
私はふふっと笑ってから、その答えを告げた。
*
「行ってきます!」
リビングを抜ける。
ガッと手をかけたドア。
早く、早くこのことを伝えたい……!
溢れ出す思いが抑えきれなくなって、私は家を飛び出した。
瞬間──。