夢色メイプルシュガー


「懐かしい……。芽衣が小さい頃つくってくれたのと、そっくり」

「え? ……憶えて、くれてたの?」


私はぱちぱちと瞬きし、ケーキを眺めながらにっこりと微笑むお母さんに近づく。


「忘れるわけないわ」


──ドクン。


嬉しい……。

憶えててくれたんだ。



「……おいしい!」


ひとくち食べるなり、お母さんが声を上げた。

思わず頬が緩む。

と、その時。


「あれ、この味……」

「気づいた? 実はね」



とっておきの隠し味。

私はふふっと笑ってから、その答えを告げた。







「行ってきます!」


リビングを抜ける。

ガッと手をかけたドア。



早く、早くこのことを伝えたい……!



溢れ出す思いが抑えきれなくなって、私は家を飛び出した。


瞬間──。

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