夢色メイプルシュガー
夢じゃなかった。
鳴り響くアラーム音。
パチリと開く重たい瞼。
瞬時に蘇った、昨日の記憶。
あんなに夢であってと願ったのに……!
こんなにも悲しい朝を迎えたのは、今日が初めてだった。
はぁ……。
溜め息が、抜け出した魂のように零れ落ちていく。
「どうして……」
失意に陥った脳が、その時刹那に悪あがきを始めた。
突如空から巨大な隕石が落ちてきて、地面に大きな大きな穴が空かないだろうか。
あわよくばそれがうちの学校の前で、
“ヤッター今日の学校はお休みだねっ☆”
なーんて、希美から歓喜の連絡がくればいいのに……。
そんなことを延々と考えているうちに、刻々と時は過ぎていった。
家を出たのは、なんといつもの6分遅れ。
少しでも時間を取り戻そうと、私は早足になる。
眩しい陽の光に照らされる濃い緑も、この時ばかりは、一切目に入ってこず。
危うく曲がり角を素通りしそうになったり、太ーい電柱に激突しそうになったり。
他にも、たった数分の間で散々な危機に遭ってしまった。
……全部、昨日の“アレ”のせいだ。