夢色メイプルシュガー


「芽衣」


新たにどこからか、私の名前が聞こえてきた。


“芽衣”

私をそう呼ぶ人は、このクラスに全くいないってわけじゃないけど……。


男の子に“芽衣”なんて呼び捨てする人、誰かいたっけ?


ドキリと振り向いて目に入ったのは──。



「そ、宗谷くん!?」



私が今、一番会いたくない人だった。


待って。

やだ。

嘘でしょ。


目を丸く開いたまま固まっていると、彼はスッと私に赤い棒状の物を差し出してきた。

これ……。


私の愛用の色鉛筆だった。

そうか、昨日焦って多目的室に忘れてきちゃったんだ……。


「ありがとう」


軽く微笑んでから受け取って、私はすぐにそれを机の上に置いてあった筆箱にしまった。


「ところで、その……。何で“芽衣”なの?」


さっきから気になっていたこと。

それを、囁くように訊ねる。


だって、特に仲良くないのに急に呼び捨て……しかも下の名前でなんて。

なんて言うかその。

とにかく、おかしいでしょ?

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