夢色メイプルシュガー
「だってお前の名前、“芽衣”だろ?」
「え?」
いや、そうだけど。
そうなんだけどね?
そんな意味で言ってるんじゃなくて……。
あっ!
「あの……」
「ん?」
「ええと……」
“昨日のことは絶対に誰にも言わないで”
喉まででかかっているその言葉が、なかなか出てこない。
昨日も言ったけど、もしかしたらポロッと零されちゃうかもしれないし。
そもそも、聞いていなかった可能性だってある。
だからこの機会、言われる前に先手を、と思ったんだけど……すぐ近くに希美がいるんだもの。
そんな会話したら、あやしまれちゃうこと間違いなしよね。
どうやって伝えれば……。
「なんだよ、変な奴」
「なっ」
「そうだ。今日の放課後って暇か?」
放課後?
悶々とする最中問い掛けてきた宗谷くんに、小さく首をひねった。
「えっと……」
「ちょっとー、メイメイと宗谷くんて仲良かったんだ〜!」
「……!?」
突然のことに言葉が詰まる私。
そこへ、胸の前で手を合わせた希美が、愉しそうに声を落とした。
仲がいい……って、私と宗谷くんが?
「や、別にそんなわけじゃっ」
ちょっと、変なこと言わないでよ〜!
急いで訂正を入れるも、もともとよく通る希美の声。
あんなに大きな声だったら……。
「なになに?」
「芽衣ちゃんと宗谷くん?」
クラス中の視線が、一気にこちらに集中したのは言うまでもない。
うわぁ、もう最悪。
そんな私の気持ちを知らずにか否か、希美は「いつからー?」「教えてくれればよかったのにー」と、面白そうに囃し立ててくる。
たしかに、宗谷くんとは今まで全くと言っていいほど関わりがなかったから、急にお喋りしてたら気になるのかもしれないけど。
その好奇心、今だけは心の奥にしまってくれないでしょうか……。
「ねぇ、宗谷くん。メイメイとはどんな関係なのー?」
──ドキィッ!