夢色メイプルシュガー
*
「しっかり範囲を確認しておくように」
帰りのHR。
担任の先生から、中間テストについてのアナウンスがあった。
5月の末からだから……あと1ヶ月もしないうちに、もう1日目がやってくる。
早いなー。
そう思いながら、筆箱のファスナーを開ける。
ボールペンを入れようと中を覗いた時、ふと、仲間外れの赤い色鉛筆が目に入った。
あの朝以来、宗谷くんは一度も話しかけてこなかった。
そのおかげか、周りのみんなもなんとか静まってくれて、平穏はすぐに戻ってきたんだ。
……まあ、希美は案の定手強かったけどね。
そんなわけで。
何はともあれ、今はホッと一安心している。
知られた相手が宗谷くんで、ある意味助かったのかも……。
だんだん、そんなふうに思ってきた。
ペラペラとお構い無しに言いふらすようなタイプの人だったら、どうなってたかわからないもの。
私は赤いその色鉛筆を取り出すと、仲間のいる筆箱の中に帰してやった。