夢色メイプルシュガー






「しっかり範囲を確認しておくように」


帰りのHR。

担任の先生から、中間テストについてのアナウンスがあった。


5月の末からだから……あと1ヶ月もしないうちに、もう1日目がやってくる。


早いなー。

そう思いながら、筆箱のファスナーを開ける。

ボールペンを入れようと中を覗いた時、ふと、仲間外れの赤い色鉛筆が目に入った。



あの朝以来、宗谷くんは一度も話しかけてこなかった。

そのおかげか、周りのみんなもなんとか静まってくれて、平穏はすぐに戻ってきたんだ。

……まあ、希美は案の定手強かったけどね。


そんなわけで。

何はともあれ、今はホッと一安心している。


知られた相手が宗谷くんで、ある意味助かったのかも……。

だんだん、そんなふうに思ってきた。

ペラペラとお構い無しに言いふらすようなタイプの人だったら、どうなってたかわからないもの。


私は赤いその色鉛筆を取り出すと、仲間のいる筆箱の中に帰してやった。

< 34 / 228 >

この作品をシェア

pagetop