夢色メイプルシュガー


「やっぱり、ここにいた」


例の多目的室、目前。

なんだか嬉しそうに声を響かせたのは、突如背後から現れた、宗谷くん。

続いて、


「宗谷くんっ」


喉の奥から振り絞ったようなかたーい声を出したのは、どういうわけかその宗谷くんに抱きしめられている──私。

そう。

彼は抱きついてきたんだ。

いきなり現れて、いきなりギュッと、後ろから。


どうしよう……。


状況を呑み込んだ瞬間、一気に呼吸が荒くなった。

身体中が熱くなって、心臓が壊れちゃいそうなほどまでに、激しく音を立てる。


だ、だめ、こんなの──。



「はなして……っ!」


私は一言叫んで、腰に巻かれた腕をなんとか無理矢理引き剥がした。

……ふぅー、助かった。


そうやって、ホッと息をついたのも束の間。



「びっくりした?」


覗き込んできた宗谷くんに、私は声を荒らげる。


「と、当然よ!」


だって、あんなこと……。


「芽衣って、おもしろいよな」


お、おもしろい?

どこがよ?


クスクス肩を震わせる宗谷くん。


何がそんなにおかしいの?


意味がわからない。


……私はただ、本当に大変だったんだから。


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