夢色メイプルシュガー
それからの記憶は、ほとんどない。
いつの間にか履き替えていた靴に、いつの間にかぐぐり抜けていた校門。
大きな橋を越えて、信号は……いくつ渡ったっけ?
わからない。
わからないまま。
ただ足を動かして、動かして。
導かれるままに、駆けていった。
「ねぇ、宗谷くん。どこへ行ってるの?」
何度訊ねても結果は同じなのに、つい訊いてしまう。
「着いてからのお楽しみ」
ほら、またそう言って、謎のまま。
これからいったい、何が起こるんだろう?
不安。恐怖。
そんな感情が心を占める一方、
たしかに生まれている、小さな光。
なんだろう、これ。
広い海。
大きな船に乗って、さあ遠くへ。
地図はない。
ただあてもなく、
見たこともないなにか財宝を求め、進んでいく。
そんな、不思議な感覚──。