夢色メイプルシュガー


「どうして」


動揺を隠しきれない。


「どうして、そんなこと……」


怖くなって俯く。



ほんとはまだなりたい?


やめてよ。

だって私……。


「んなの、見てたら誰でもわかるよ」

「へ……?」


ふっと顔を上げた。


──ドキッ。


その瞬間目に映った宗谷くんの顔は、優しい表情をしていた。



「昨日の放課後のお前、今日ここに連れてきた時のお前、親父を紹介した時のお前。……すげーいい顔してたもん」

「な、にそれ」

「あの涼岡芽衣がこんな顔するんだって俺、正直めちゃくちゃ驚いた」


こんな顔......?


「ああ、今めちゃくちゃ楽しいんだろうなあ。“好き”なんだろうなあって……」


ドクン、ドクン──と、心臓の脈打つ音が身体中に響く。


「なんつーの? 昨日見た芽衣が、俺にはキラキラして見えたんだよ」

「……!」


……宗谷くん。



「芽衣さん、ちょっといいかな?」

「は、はい」


ぴくり、背筋が伸びる。

宗谷さんの声が聞こえたのと同時に、私は反射的にスカートを握りしめていた。


「無理にとは言わないよ。だが、息子の言ってることもよくわかるんだ」

「……」

「ケーキは好きかい?」


優しい眼差しで訊ねてきた宗谷さん。

そんなの……。

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