夢色メイプルシュガー


何日かして、そこは新しくできたケーキ屋さんだと知った。

すぐに『行きたい!』と言うと、お母さんは『次の日なら』と連れて行ってくれたんだ。


〈Patisserie plage〉


そんな看板を前に、胸が高鳴る。


今までにケーキを食べたことは、もちろんあった。

お誕生日とか、入園式の日とか。

でも、ケーキ屋さんに行くことは、その日が初めてだったから。



『……っ!?』



一歩足を踏み入れた瞬間、目の前に風が吹き抜けたような感覚が走った。


眩しい照明。

光り輝く鮮やかなケーキたち。

そして、鼻腔を擽るあまーい香り。


そのどれもが新鮮で。


『わあ……』


心が、瞬く間に温かい何かで満たされていった。



〈Patisserie plage〉


私の、初めてのケーキ屋さん。

そこは今までに見たことのない、夢色の世界だった。

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