夢色メイプルシュガー






「メイメイ、またメガネに褒められてたねー」


お昼休み。

お弁当を食べていると、目の前で小川希美(おがわ のぞみ)がにやりとそう言った。


“メガネ”とは、英語の田辺先生のことだ。

希美は人にあだ名をつけるのが好きみたいで、私もいつの間にか、“メイメイ”と呼ばれていた。



「いーなー。私もメイメイみたいに賢かったらなぁ。一度でいいから、優等生気分を味わってみたいものだよ」

「なら勉強すればいいじゃない」

「う、それはちょっと……」



大きな瞳に、おだんご頭。

小柄で愛らしく、小動物みたいな雰囲気を持っている彼女。

天真爛漫な性格で、私とは真逆のタイプ……なはずなんだけど。

これが不思議と気が合って、1年の時からずっと一緒にいる。


「でもすごいなー、弁護士なんて」

「全然! すごくなんかないよ」


私は軽く笑って否定してから、お箸で一口大に切った玉子焼きを口に運んだ。


少しお砂糖の入った、甘い味付け。

優しい甘みが、ふんわりと口の中に広がる。

< 6 / 228 >

この作品をシェア

pagetop