夢色メイプルシュガー
*
「メイメイ、またメガネに褒められてたねー」
お昼休み。
お弁当を食べていると、目の前で小川希美(おがわ のぞみ)がにやりとそう言った。
“メガネ”とは、英語の田辺先生のことだ。
希美は人にあだ名をつけるのが好きみたいで、私もいつの間にか、“メイメイ”と呼ばれていた。
「いーなー。私もメイメイみたいに賢かったらなぁ。一度でいいから、優等生気分を味わってみたいものだよ」
「なら勉強すればいいじゃない」
「う、それはちょっと……」
大きな瞳に、おだんご頭。
小柄で愛らしく、小動物みたいな雰囲気を持っている彼女。
天真爛漫な性格で、私とは真逆のタイプ……なはずなんだけど。
これが不思議と気が合って、1年の時からずっと一緒にいる。
「でもすごいなー、弁護士なんて」
「全然! すごくなんかないよ」
私は軽く笑って否定してから、お箸で一口大に切った玉子焼きを口に運んだ。
少しお砂糖の入った、甘い味付け。
優しい甘みが、ふんわりと口の中に広がる。