夢色メイプルシュガー
「……びっくりした。芽衣って案外、強引なとこもあんだな」
立ち止まってすぐ、階段の壁に寄りかかりながら、宗谷くんが呟いた。
だけど今の私にはそんな声も耳に入らない。
……よし、言わなきゃ。
ドキドキと緊張が募る。
足がちゃんと地面についていないような、変な浮遊感に襲われる。
だけど、大丈夫。
……ふーっ。
私は、ゆっくりと息を吐いた。
「昨日のことなんだけ──」
「あれ、涼岡?」
──ドキッ!!
階段の下から聞こえてきた声に、心臓を止められそうになった。
ぶわっと冷や汗が吹き出てくる。
この声は……。
「こんなところで何やってんの?」
振り向くと、やっぱりそこには私のよく知る人がいて。
「乾先輩!?」
頭でわかると同時に、その名を口にしていた。