夢色メイプルシュガー
「あの“鉄壁の大和撫子”に、ついに彼氏ができたのかと思ってさ」
「ちょっ、からかわないでくださいよ……!」
ハハハと笑う先輩に、私は前のめりになる。
“鉄壁の大和撫子”
中学の時、どこかの誰かが私につけたあだ名……らしい。
乾先輩から言われるまで、私はそのことを全く知らなくて。
知ったときなんかはもう、恥ずかしくて恥ずかしくて……。
というかまず、どこがどう“鉄壁の大和撫子”なのかさっぱりなのよね。
「ごめん、ごめん。涼岡といると、どうも意地悪したくなっちゃって」
「なんですか、それ」
手を合わせる乾先輩に、私は少し口を尖らせる。
そんな私を見てなのか、先輩はクスクスと愉しそうな声を出した。
……懐かしいな、この感じ。
昔もこうやってよく言い合いしてたっけ。
乾先輩と仲良くなったのは、生徒会がきっかけだった。
書記の後任だった私は、前任の乾先輩と接する機会が多いこともあり、いつの間にか気さくにお話しするようになっていたんだ。